
CDNとは?『イカゲーム』とNetflixでわかるコンテンツ配信の仕組み
Q1. なぜCDNが必要なの?
CDNは、ユーザーに近いサーバーからデータを配信することで、遅延を減らし、サイトの表示速度を向上させるために利用されます。
Q2. CDNはどのように動作するの?
CDNは複数の地域にある「POPサーバー(拠点サーバー)」にコンテンツをキャッシュ(事前保存)しておき、ユーザーに最も近いPOPから配信します。
Q3. エッジコンピューティングとの関係は?
CDNは単なるファイル配信から進化し、各POPに計算処理機能を持たせることで、
画像や動画などをリアルタイムに加工できるようになりました。
Q4. スタートアップでも使えるの?
はい。AWS CloudFrontなどのパブリッククラウドで自前構築することもできますが、
Weekerpの完全マネージドCDNなら、コーディングなしですぐに利用できます。

After a long day, MJ — 疲れた韓国人のMJは家に帰り、Netflixで『イカゲーム』を見ようとします。
しかし、動画が止まってしまい再生が途切れます。
苛立ったMJは考えます。
「なんでこんなに遅いんだ? もしかしてアメリカから配信してるのか?」
そして、ひらめきます。
「Netflix本社の隣で見れば、きっと速いに違いない!」
そう思い、MJはカリフォルニア行きの飛行機に乗りました。

長旅の末、MJはカリフォルニアに到着します。
Netflix本社の近くのAirbnbにチェックインし、
「これで完璧だ!」と意気込んで再生ボタンを押します。
しかし、結果は同じ。
むしろ前より遅い気がします。
困惑したMJは、ITに詳しい友人に電話します。
MJ: 「今アメリカにいるのに、まだ遅いんだけど!」
友人: 「それは当然だよ。Netflixは、君の近くのサーバーから配信してるんだ。わざわざ来なくてもよかったのに!」
MJ: 「……え?」

MJは呆然と画面を見つめます。
長時間のフライト、有給休暇、そして妻からの着信…。
その時、ようやく理解しました。
Netflixは最初からアメリカ本社から配信していたわけではなく、
CDN(Content Delivery Network) という仕組みを使っていたのです。
CDNとは?

MJが体験したように、Netflixは世界中の主要都市に
動画を保存した「ミニNetflixの倉庫」を設置しています。
この倉庫を POP(Point of Presence)と呼びます。
韓国のユーザーは、アメリカ本社ではなくソウルのPOPから動画を受け取っています。
つまり、
CDNとは「コンテンツをユーザーの近くに届けるためのネットワーク」
なのです。
どんな仕組み?
Netflixは、メインサーバーにある動画を世界中のPOPにコピーして保存します。
この事前保存のことを キャッシュ(Caching)と呼びます。
ユーザーが動画を再生すると、
最も近いPOPからデータが配信されるため、物理的な距離が短くなり、
どこからでも同じ速度で視聴できるようになります。
今ではスタートアップも利用
昔はCDNといえば、ディズニーやヤフーのような大企業だけが使う高価なインフラでした。
しかし、今は状況が大きく変わっています。
CDNはとても簡単に導入できるようになり、
米国のアクセラレーターY Combinatorに参加しているスタートアップを調べると、設立から3か月以内の企業でも98%がCDNを導入しています。
いまやCDNは特別なものではなく、グローバル展開する企業にとって必須の技術です。
CDNを導入した場合としない場合の違いはこちら
→ S3 vs CloudFront Speed Comparison
CDNのメリット
CDNを導入することで、次のような効果があります。
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高速化 — 近くのサーバーから配信されるため、遅延が少ない。
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安定性向上 — 複数のエッジサーバーが負荷を分散するため、トラフィック急増時も落ちにくい。
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セキュリティ強化 — エッジサーバーがDDoSなどの攻撃を吸収し、オリジンサーバーを保護。
さらに、運営者の視点では:
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SEOの改善(ページ表示速度向上による検索順位アップ)
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グローバルで一貫したユーザー体験の提供
近年のトレンド:エッジにコンピュータを置く
近年、CDN事業者はPOPに計算処理能力を追加し、
より効率的にコンテンツを処理できるようになっています。
たとえば、PCとモバイルでは動画の解像度やフォーマットが異なります。
画像(サムネイル)も同様に、デバイスに合わせたサイズ調整が必要です。
従来は、50×50や1000×1000など複数サイズを事前に保存していましたが、
リクエスト時にリアルタイムでリサイズしてキャッシュできれば効率的です。
これにより、
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ストレージ使用量を削減
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開発プロセスを短縮
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ユーザー体験を最適化
このような処理方式をオンザフライ(On-the-fly)画像処理と呼びます。
POPに追加されたコンピューティングユニットは、
画像だけでなく、WAF(Web Application Firewall)や動画、PDFなど
さまざまなコンテンツの前処理・後処理を担います。
これがエッジコンピューティングと呼ばれる仕組みです。
パブリッククラウドでのCDN
主要なクラウドサービスが提供するCDNとエッジコンピューティングの例:
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AWS — CloudFront + Lambda@Edge
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Cloudflare — CDN + Workers
これらのプラットフォームでは、開発者がコードを追加して
エッジ側で柔軟に処理を実行することができます。
一方、Weekerpはオンザフライ画像処理などの機能をあらかじめ組み込み、
コーディング不要の完全マネージドCDNを提供しています。
よくある誤解
- 実際にアメリカに行ったわけではありません。
- Netflixのサーバーは本社ではなく、クラウド上で稼働しています。
まとめ
- CDNは、ユーザーに近いサーバーからコンテンツを配信し、速度と性能を向上させる技術。
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POP(Point of Presence)はデータをキャッシュし、安定した配信を実現。
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エッジコンピューティングにより、画像・動画などをリアルタイムに処理可能。
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グローバルに展開するサービスにとって、CDNはもはや必須インフラです。
